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特定非営利活動法人 前立腺がん啓発推進実行委員会

Prostate Cancer Education Council in Japan (PCEC-Japan)

副理事長 内藤誠二

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 近年、わが国は急激な高齢化社会に突入し、食生活の欧米化も相俟って、前立腺がん罹患者数が急増しています。これに伴って前立腺がんで亡くなる方も増加の一途を辿っており、早急に全国的な対策をたてる必要性が指摘されています。環境要因のみならず、遺伝的要因も大いに関与している前立腺がんの罹患者数を減少に転じさせることはなかなか困難ですが、死亡者数を減らすことは、早期に診断し、適切な治療を施すことで改善されるものと期待されます。前立腺がんの早期診断に有用な検査が血液の PSA(前立腺特異抗原)測定で、PSA 検診を受ける群と受けない群による前立腺がん死の頻度を比較した最近の欧州の大規模無作為化比較試験では PSA 検診による有意な前立腺がん死亡率減少効果が示されました。PSA 検診による前立腺がん死亡率減少効果を示唆する研究はこのほかにも相次いで報告されており、いまや PSA 検診は前立腺がんで死なないための最も有効な対策と考えられています。一方、PSA 検診では受診することの不利益として過剰診断・過剰治療という問題がしばしば取り上げられてきました。しかし、PSA 検診で発見された早期前立腺がんの一部の方では直ちに積極的治療に踏み切らずに、定期的に PSA 測定と前立腺針生検を組み合わせて経過観察を続け、必要・適切な時期にはじめて治療を開始するという監視療法が過剰診断・過剰治療対策のひとつとして現在着実に普及しつつあります。また、種々の低侵襲治療の開発・発展に伴って、早期がんであれば治療の選択肢は多く、各個人に応じて QOL にも配慮した適切治療が可能となってきました。現在、全国の自治体で PSA検査をなんらかの形で健康診断に取り入れている市町村は 80%以上に上りますが、残念ながらその受診率は50歳以上の男性の10~20%に留まっており、まだ十分ではありません。50歳以上の男性の70~80% が少なくとも1回は PSA 検査を受診し、PSA 検査普及後前立腺がん死亡率が低下傾向に転じている米国といまだに前立腺がん死亡率が上昇傾向にあるわが国の違いは PSA検査の普及度の違いにあると考えられます。

本委員会はわが国におけるこの状況を改善するとともに、医療関係者のみならず一般の方々に前立腺がんに対する正しい知識を深めていただき、前立腺がんで亡くなる方を1人でも減らしたいと願う有志の泌尿器科医が集って立ち上げられました。私どもの活動にご理解、ご支援いただければ幸いです。

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